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『東京都美セレクショングループ展 2021』
「暗くなるまで待っていて」
「返歌ー海を渡る光」
2021.6.10-6.30
東京都美術館ギャラリー B
《返歌―海を渡る光》|東京都美セレクショングループ展 2021「暗くなるまで待っていて」出品作品。
本作は、『古事記』に記される豊玉姫と彦火火出見尊の往復の和歌を題材とした映像インスタレーションである。展覧会では、照明や上映をインターバル方式で制御し、来場者が会場を巡りながら、作品が次々と現れる構成となった。
《返歌―海を渡る光》では、海を隔てて交わされた二首の和歌をモールス信号に変換し、打ち込む様子と海の風景を重ね合わせた映像を、半鏡面状のスクリーンに投影した。鏡のようなスクリーンは、映像とともに鑑賞者自身の姿も映し出し、視覚と記憶、他者と自己の境界を揺るがす装置として機能する。
この和歌は、海によって引き裂かれた夫婦が交わした返歌であり、そこには愛する者の不在と、それでもなお続こうとする対話の試みが込められている。古代において海は異界との境界とされ、現代においてもなお、私たちの想像力を越境へと誘う場である。
本作は、時間と空間を超え、いかにして「不在」との交信が可能であるのかを問う試みである。静謐な海と断続的な信号音が交差するなかで、見えない相手に語りかける言葉の届き方そのものを、映像空間として立ち上げている。
沖つ鳥 鴨着く島に 我が率寝し 妹は忘らじ 世のことごとも
赤玉の 光はありと 人は言えど 君が装いし 貴くありけり

2021
8 ミリフィルム、映写機、ミラーフィルム、真珠、椅子
8 mm film, projector, mirror film, pearls, chair
撮影:間庭 裕基
photo:MANIWA Yuki
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