top of page
『パランプセスト 重ね書きされた記憶/記憶の重ね書き』
「飯嶋桃代展」
2014 5.24-6.21
αM
この展示では、《開封のイエ》《format》《colorful stars in the white sky》の三つのシリーズを発表した。いずれも数年にわたって制作を続けてきた作品群であり、今回はそれぞれに新作を加え、三つのシリーズを相互に関係づけるかたちで、インスタレーションとして構成した。
三つのシリーズはいずれも、衣服およびその付属品をモティーフとしている。わたしが衣服に触発されるのは、それらが家族共同体――とりわけ女性にとってのそれ――と深く関わる事物だからである。たとえば、毛皮のコートやTシャツは、家族間で授受や貸し借りがなされることがあるし、魅力的なボタンは、古いコインのように大切に受け継がれていく。こうした衣服や装飾品は、家族という絆の象徴でもあるのだ。
《開封のイエ》では、家族共同体がもたらす束縛と安心という両義的な関係に焦点を当て、それを暴力的に乗り越えようとした。具体的には、古着を鋳込んだワックスの塊を、衣服ごと家型にカッティングするという行為によって表現している。
また、《colorful stars in the white sky》では、ボタンにまつわる家族の記憶に思いを寄せることで、亡霊たちを布のレリーフとして呼び寄せた。亡霊とは、死と生のあわい――いいかえれば、忘却と現存の中間――に姿を現す存在である。
そして《format》では、一着の毛皮のコートをパターンに分解し、再縫製することで、他の毛皮やフェイクファーへと置き換えていく作業を行った。これは、かつて家族の身を包んできた毛皮の解体と再構築の試みであると同時に、他者の受容と自己の形成の関係性をも暗示している。

撮影: 木奥惠三
photo:KIOKU Keizo
bottom of page